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安全保障関連法に反対する東京工業大学有志のアピール

 私たち東京工業大学有志は、9月19日に通常国会において強行議決された安全保障関連法に対して、立憲主義、民主主義、基本的人権の危機の観点から反対し、その廃止を求めます。

 

 本法は、①日本が攻撃を受けていなくても他国が攻撃を受けて、政府が「存立危機事態」と判断すれば武力行使を可能にし、②米軍等が行う戦争に、世界のどこへでも日本の自衛隊が出て行き、戦闘現場近くで「協力支援活動」をする、③米軍等の「武器等防護」という理由で、平時から同盟軍として自衛隊が活動し、任務遂行のための武器使用を認めるものです。

 

 安倍首相の言う「武力行使は限定的なもの」であるどころか、自衛隊の武力行使を際限なく広げ、「専守防衛」の建前に反することになります。武器を使用すれば、その場は交戦状態となり、憲法九条一項違反の「武力行使」となることは明らかです。60年以上にわたって積み重ねられてきた「集団的自衛権の行使は憲法違反」という政府解釈を安倍政権が覆したことで、米国の侵略戦争に日本の自衛隊が参戦する可能性さえ生じます。日本が戦争当事国となり、自衛隊が国際法違反の「侵略軍」となる危険性が現実のものとなります。

 

 大多数の憲法学者、歴代の内閣法制局長官、元最高裁判所判事、さらには元最高裁判所長官までもが指摘するように、本法は日本国憲法の平和主義に反しており、違憲であることは明らかです。安倍内閣はこのような安全保障関連法を、憲法改正を経ずして、一片の閣議決定によって憲法の解釈を独断的に変更し、「集団的自衛権は合憲」と強弁し成立させました。これは立憲主義に反するばかりか、知性に対する冒涜で、断じて見過ごすことはできません。

 

 私たちは、かつて日本が行った侵略戦争に、多くの学徒を戦地へ送ったという、大学の戦争協力の痛恨の歴史を担っています。その歴史への深い反省から、憲法九条とともに歩み、世界平和の礎たらんと教育研究活動にたずさわり、再び戦争の惨禍を到来させないようにしてきました。二度と再び、若者を戦地に送り、殺し殺される状況にさらすことを認めることはできません。

 

 政府・与党は、衆議院審議においては「国民の理解が進んでいる状況ではない」と言いながら強行採決を行い、引き続く参議院審議においても「支持が広がっていないのは事実」としながら再び強行採決を行いました。本法に反対する意見が半数を超え、また法の成立を急ぐことへの懸念を持つ人が圧倒的に多数であるにも関わらず、国会で強行採決し、議決したことは、議会制民主主義、さらには主権在民と民主主義の原理をふみにじるものであり、許されることではありません。

 

 東京工業大学は下記に示したような崇高な使命を高らかに謳っています。この法律の内容及び議決の有様は、「東京工業大学の使命」がいう「善良・公正」さと「我が国および世界の平和と発展に貢献」という理念に反するものであり、この点からも座視することはできません。

 

 私たち東京工業大学の教職員、学生、卒業生有志は、東京工業大学の使命に基づき、さらに学問と良識の名において、この違憲の安全保障関連法が国会で強行に議決されたことに強く抗議し、本法の廃止を求めます。また、この安全保障関連法への反対、抗議に賛同されるよう東京工業大学の教職員、学生と社会のあらゆる人に訴えます。

 

 

2015年10月22日

        安全保障関連法に反対する東京工業大学有志の会

 

 

 

東京工業大学の使命(東工大HPより)

 

東京工業大学は、広く理工学分野における研究者および教育者、さらには産業界における技術者および経営者として指導的役割を果たすことのできる、善良・公正かつ世界に通用する人材を育成することを使命とします。

その使命のもと、必要な一般的教養、専門的知識および倫理観を教授するとともに、理工学分野を中心とする学術に関する基礎から応用までをあまねく研究し、深奥を究めて科学と技術の水準を高め、もって文化の進展に寄与し、我が国および世界の平和と発展に貢献します。

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